民法(債権関係)改正 1
朝倉市甘木の遺言・相続サポート 行政書士うめだ法務事務所です。
前回の続き、民法の改正点をお話します。
今回の改正の主な目的は、
1. 民法の内容を社会・経済の変化に対応させる
2. 国民一般に分かりやすいものにする
民法は、明治時代に作られた法律です。
少しずつ時代の流れに合わせて改正をしてきました。
現状に合わない部分があるため、社会・経済に合わせることが目的です。
また、法律の内容が難しい部分があります。
法律家しか意味が分からないのでは、意味がありません。
そこで、国民一般が分かるように、用語を修正します。
改正点(1) 意思表示
現在、意思能力(法律上の効果を認識して判断する能力)がない人が、契約等をした場合、その効果については、民法に規定がありません。
たとえば、幼児が「10,000円借りる」という契約をした場合の効果です。
本当に契約は有効でしょうか?
条文に規定はありませんが、裁判所の判断や学者の間では、当然に無効としています。
判断する能力がないのだから、不利益を受けないようにという理由です。
これを正式に「条文化」します。
改正点(2) 錯誤
民法には現在このような規定があります。
民法第95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。
ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
契約をした場合でも、その内容に錯誤(思っていた内容と表示した内容が食い違っていることを、本人が知らないこと)があった場合には、その契約は、無効になります。
「錯誤」が少し難しいでしょうか?
たとえば、10ポンドと書くつもりが10ドルと書いてしまった場合や、10ポンドと10ドルが同価値と誤解して10ポンドの価値を思って10ドルと書いた場合などです。
簡単に言うと、勘違いです。その勘違いを本人が知らないことです。
その状態でした契約は、無効になります。
無効とは、そもそも効力がないというものです。
本来その無効を主張できる人、主張できる期間は、規定がありません。
ただ、錯誤の無効については、裁判所は、「主張できるのは、表意者本人であり、第三者は主張できない」としています。表意者(勘違いした人)を保護する規定だからとしています。
でも、その相手方も迷惑な話ですよね?
勝手に勘違いされて、契約は無効だ!!なんて言われても…
つまり、相手方を保護する必要もあるわけです。
そこで、改正では、「無効ではなく、取り消し」にします。
取り消しとは、「契約は有効ですが、取り消しになったらさかのぼって無効になります。」
無効は、そもそも無効。
取り消しは、主張されて初めて無効になる。逆にいえば、主張されるまでは、有効。
これに改正するメリットは、
取消しの効果を、「その勘違いを知らなかった相手には主張できない」ようにする。
つまり、相手は保護されます。先の例で、勘違いしてたから、契約は無効だ!!と言われても、その勘違いしていることを知らなければ、何言ってんねん!!と言えるわけです。
また、その期間についても、取消であれば、「追認できる時(取消原因となっていた状況が消滅した時:詐欺に気づいた時や強迫を逃れた時や成年に達した時など)から5年、行為の時から20年」に限定されます。
無効であれば、いつでも、いつまででも主張できるのに対し、取消は、5年又は20年に限られるのです。
相手方としては、主張期間がある方が、保護されますよね?
今回は、ここまで!!